大正7年の5月に、20代後半の和辻は、友人たちとともに、唐招提寺・薬師寺・法隆寺・中宮寺など奈良とその周辺の寺々を巡り、法華寺十一面観音や、薬師寺吉祥天女、百済観音、法隆寺金堂壁画など、飛鳥・奈良の古建築・古美術に感動して、その印象を情熱をこめて書きとめた。
それを大正8年に出版したが、情熱が滲み出た筆致を自ら恥ずかしく思うようになり、戦後直後に全集として出版されるに当たり、改訂版を収録した。
本書は、その改訂版を収録している(岩波文庫版が底本)。
戦時中、戦地に赴く前に、本書を手に奈良を巡った人もある由。