時代遅れとの批判に抗して書かれた鴎外の代表的歴史小説7編を収録。
「堺事件」は、官命で堺を治める土佐藩士とフランス兵との衝突後の武士の処断を巡る抗議の顛末を、「護持院原の敵討」は江戸中期の敵討ちに至る苦難を、「阿部一族」は、肥後藩家中の重職の阿部一族が上意討ちで全滅した事件を描く。
「高瀬舟」は、落ち着いた様子の島送りの罪人の事情を、「最後の一句」は、死刑となる父親を救うための娘の嘆願の顛末を、「安井夫人」は、大儒学者の安井息軒の妻お佐代の清廉さを、「じいさんばあさん」は、老夫婦の仲睦まじさの背景を描く。