友人の妻を我が妻とする社会的に許されぬ恋を描いた『それから』の続編的な『門』。
宗助は、かつての友人・安井の妻・お米と世間の目を避けて夫婦でひっそりと暮らしている。
質素で単調ながら穏やかな愛情で結ばれた生活である。弟の小六が居候で同居しながら大学に通っているが、その学費打切りや、職場での人員整理の動き、安井が蒙古から一時帰国で大家宅に立ち寄ったりと、小さな波乱が起こり、宗助の心は乱れる。
安息を求めて禅寺に籠るが、悟りを開けないまま戻った宗助。が、月が変わり、寒さが緩む頃、夫婦の上に平穏が戻った。