谷崎の盲目の者をテーマにした作品2編。
「春琴抄」は、大阪道修町の裕福な商家の娘、春琴は、美貌ながら9歳のとき眼病で失明する。
それからは、検校の下で琴や三味線の稽古に励み、自らも師匠となって人に教えるようになった。
一方、身の回りの世話をする丁稚の佐助は彼女に思慕の情を持ち、自分でも夜中に密かに三味線を練習し始める。
それが主人と春琴の耳に入り、以降、春琴の弟子となって琴を習うようになった。
春琴は佐助との結婚を親に勧められるのを拒絶するが、やがて身ごもる。
周囲の思惑に二人は強く関係を否定し、我が子を里子に出してしまうのだが、それでも、同居し師弟の関係は続けるのだった。
佐助は年下の春琴をいつまでもお師匠様と呼び、献身的に仕えた。
そんなある日、稽古がひときわ厳しい春琴は人の恨みを買い、顔に熱湯をかけられ大火傷を負う。
春琴が頭巾をかぶって人目を避けようとするのをみて、佐助は誰よりも胸を痛め悩んだ。
そして、自ら針で目を刺し、失明することを選ぶのであった―。
谷崎潤一郎の耽美主義文学の名作で、数度にわたり映画化もされている。
マゾヒズムを超越した春琴と佐助との師弟関係を描いている。
他の一作は、「盲目物語」。