【解説】
芥川龍之介の作品群には、「保吉もの」と呼ばれる、「堀川保吉」という人物が主人公の作がいくつかある。30歳~32歳にかけて(1922年~1924年)執筆されたもので、主に芥川の子供のころの思い出や、海軍機関学校に英語の非常勤講師として勤めていた頃の経験を基に書かれており、自伝的色彩の作品となっている。
弊社オーディオブックでは、「自伝的『堀川保吉』シリーズ」として、2巻に分けて刊行しており、本巻は2巻目となる。
本巻に収録したのは、「あばばばば」「お時儀」「寒さ」「早春」「或恋愛小説」の5作品。
「あばばばば」は、保吉の勤め先の海軍学校に近い商店の無愛想な主に嫁いできた女の変貌に驚く。「お時儀」は、数年前にある避暑地に住んでいた頃、通勤の行き帰りに停車場でいつもすれ違うお嬢さんに思わずお時儀をしてしまったことで、自分でも当惑する。「寒さ」は、物理の教官室で「伝熱作用の法則」を教官仲間の恋愛に当てはめて雑談していた後、踏切での人身事故を目撃した際にその法則を連想する。「早春」は、保吉の友人が交際相手だった女性への恋愛感情を失っていった内心を描く。「或恋愛小説」は、ある婦人雑誌の主筆に恋愛小説の寄稿を依頼されたものの、両者にイメージギャップがあった。
※第1巻には、「少年/十円札/文章」を収録。