響林社について
響林社は、近現代の文藝作品を中心とした朗読オーディオブックを中心に販売する出版社です。
響林社は、2012年(平成24年)に、オーディオブックの制作・販売を主な目的として設立されました。現在では、<朗読オーディオブック(CD、ネット配信)><大活字本(紙書籍)><電子書籍>を通して、少しの『こだわり』を持ちながら出版活動を行っています。
<オーディオブック(CD、ネット配信)>の主力は、女性朗読家のwis(ウィス/ないとうさちこ)氏の朗読作品です。それとともに、ナレーターの肉声を素にした合成音声「響林せいじ」による朗読作品を扱っています。
wis氏は、プロ(ナレーター、声優、劇団、アナウンサーなど)の出身ではありませんが、podcastで配信をはじめた頃から多くの方々から支持を得ており、大手メディアのコラムなどでも取り上げられました。
wis氏の朗読の魅力は、作品の登場人物の個性を声の自然な使い分けにより、より深く聴く人の感性に届けることにあります。夏目漱石の『吾輩は猫である』のような軽快で多くの登場人物を持つ作品から、心に沁み入る詩の世界、夢野久作の「ドグラマグラ」の「キチガイ地獄外道祭文」のような奔放な口上、あるいは、宮沢賢治の「雪わたり」などの優しく滋味溢れる童話の数々――。まったく異なる世界に聴く人を自然に惹き込んでいく、それがwis氏の朗読です。
そんなwis氏の朗読作品を、少しでも多くのリスナーの皆様にお届けしたいというのが、弊社設立当初の一番の目的でした。
そしてもう一つ、オーディオブックの一類型として補完的に扱っているのが、高性能合成音声の「響林せいじ」の朗読作品です。
これは、エーアイ社のもっとも機能が高い「声の職人」ソフトを使ったものですが、吉村せいじろうさんという魅力的な声のナレーターの方の肉声を素に作られているもので肉声に引けをとらない音声です。
このシリーズでは、収録から編集・販売に至るまでの諸コストと採算の制約から、肉声の朗読作品として通常では発行が難しい個性的な作品、ニッチな分野の作品、作家は著名でも需要面からオーディオブック化を期待できない作品、長編の作品等々をオーディオブック化しています。会話部分など、肉声朗読と比べて「不得意」な部分はあるものの、朗読作品として世に出し、“新たな選択肢を提供する“という面では大きな意義と役割があると信じています。実際、時間の経過とともに、受け入れていただけつつあることを実感しており、嬉しく感じているところです。音楽分野と比べてまだまだ低いオーディオブック分野での合成音声の認知度を向上させたいと考えています。
このような朗読オーディオブックの次に柱としているものが、「大活字本のPOD(オンデマンド出版)」や「電子書籍」です。
<大活字本>は、視聴覚障害の方々にとってだけでなく、迎えつつある高齢者社会では一般の方々にとっても無関係でなく、耳から入りやすいオーディオブック同様、目で読みやすい媒体として必要とされていくものと考えています。
大活字の媒体としては、kindleに代表されるようにリフロー型の電子書籍が普及していますが、紙書籍を指向する方々も多く、変わらない大きな役割と存在意義があると考え、発刊を続けています。
他方、<電子書籍>として発刊しているのが「響林社文庫」シリーズです。「リフロー型」のものは主として一定のテーマに即したアンソロジー的なものを中心として、また、「版面固定型」のものは主として復刻版を中心として発刊しています。
「電子復刻本(版面固定型)」というのは、発行当時の版面そのものを複写したものです。これまでは紙書籍で復刻版として発刊されるのが一般的でした。また、これをリフロー型の電子書籍にしようとすれば、多大な時間と手間を要します。これを解決するための方策として提供しているのが、「(版面固定型の電子書籍)電子復刻本」です。kindleではリフロー型が通常であるため、版面固定型での提供に違和感を感じる方もおられるようですが、制作の簡易さ、低廉さ、スピーディさ、変色やしみ修正の容易さ等の面では、これに勝るものはないと考えています。
「響林社文庫」では、発行後概ね半世紀が経過し著作権が切れた諸作品を発掘して提供しています。古書店では数千円から数万円の値が付いている貴重な書籍でも(あるいは入手困難となっている古書であっても)、響林社文庫では、200円前後の価格帯を中心に、概ね300円以下と極めて廉価な提供を実現しています。発行している書籍群は、文藝だけでなく、評論、日記・回想録、ノンフィクション、歴史、宗教等と幅広い分野に亘り、数百点に及びます。
以上ご紹介いたしましたように、響林社は、ほんの少しの『こだわり』を持ちながら出版活動を行っています。けれど、弊社の出版物は、あくまで<選択肢>として提供させていただいているもので、これまでなかった<新たな選択肢>を作り、これを広げていくことに、ささやかな意義を見出しているものです。
小規模な出版社ですが、これからも少しずつ「選択肢」を増やすことができるよう努めていきたいと考えておりますので、ご愛顧いただければ幸いです。